2011年5月29日

【映画】ヒア アフター



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評価
★★★★☆

監督
クリント・イーストウッド

出演
マット・デイモン、セシル・ドゥ・フランス、フランキー・マクラレン、ジョージ・マクラレン、ジェイ・モーア、ブライス・ダラス・ハワード、マルト・ケラー、ティエリー・ヌーヴィック、デレク・ジャコビ

メモ
  • インビクタスに引き続きイーストウッドとマット・デイモンのタッグ
  • 製作総指揮はスティーブン・スピルバーグ
  • マクラレン兄弟が可愛すぎる!
  • 冒頭の津波シーンは2004年のスマトラ島沖地震の津波を思い出して震えた
  • 劇場内ですすり泣きがチラホラ
  • 物凄くエロいシーンあり!
  • 「Hereafter」は「来世」ではありません!
  • オカルト苦手な人も大丈夫だよっつーかオカルトメインじゃないから!

蛇足
イーストウッド作品としてはあまり評価が高くないという声がちらほら聞こえてくるけど、面白かったし好きだな、こういうの。この映画の見方はいろいろあっていいと思う。ただ、「Hereafter」は「来世」ではなく「これから先、今後」と解釈しないと、劇中のマット・デイモンの能力もあってただのオカルト映画だと感じてしまうかもしれない。それはちょっと勿体無い気がする。実際そういった前評判(オカルト云々)のせいで足を運ばなかった人も多いんじゃないかな。

マリー(セシル・ドゥ・フランス)は津波に襲われ瀕死の状態から生還。おそらくこの時にマリーの中の死生観に何らかの変化があった。マーカス(ジョージ・マクラレン)は最愛の双子の兄ジェイソン(フランキー・マクラレン)を交通事故で亡くし、悲しみに打ちひしがれる。ジョージ(マット・デイモン)は人に触れるだけでその人の過去が見える能力を持つが、能力に振り回される人生に疲れ、普通に穏やかに生きたいと願う。

マリーの話。マリー「すべてはおみやげのせいね」、彼氏「何の話だ?」。この会話がこの映画の全てを表現している気がした。この会話の経緯は次のとおり。彼氏とバカンス中のマリーはおみやげを買いに行こうと彼氏を誘うが、なかなか起きようとしないので彼氏を置いて一人で買いに行き、そこで津波に襲われる。彼氏はホテルにいたので無傷。時が経ち、レストランで食事中にふとマリーがつぶやいた言葉が「すべてはおみやげのせいね」だった。津波により死生観すら変わるほどの壮絶な体験をしたマリーは、生きているのにどこか足元がおぼつかない浮遊感のようなものを引きずっていて、あの朝彼氏が起きるのを待ってのんびりしていたらこんなことにはならなかったかもしれない、との思いでこの言葉を発したのだろう。一方で彼氏は自分が津波に襲われたわけではなく、数日数週間も経てば「テレビや新聞で見たニュース」という記憶しか残らない。これは彼氏が鈍感なのではなく一般的なことだろうと思う。だからマリーの言葉は彼氏にとっては「突然」だったわけで、しかも今の自分とは因果関係が断ち切れているネタを振られても「何の話だ?」としか言えなかった。そしてこの「当事者とそれ以外の隔絶」があと二つの物語にも使われている。

マーカスの話。最愛の兄を事故で亡くし、母親は薬物中毒で入院、里親に預けられ部屋に案内されたマーカスは亡き兄ジェイソンの分のベッドも用意してもらう。はい、ここで目から汁が漏れちゃいました。突然消えてしまった兄の面影を探し求めて教会や霊能者を訪ねるも、皆「それっぽいこと」を言うだけでニセモノだと悟る。が、諦めきれないマーカスがひょんなことから出会ったジョージ。霊視(霊媒)をやめていたジョージは取り合わなかったが、根負けして一度だけマーカスを招き入れる。先例があるためジョージの言葉をいきなり鵜呑みにはしなかったマーカスだが、「数分違いで生まれた兄」の話をしたときにホンモノだと確信した。ジョージが亡き兄ジェイソンしか知らないことを次々と話していくところで、また目から汁が漏れちゃいました。長時間の霊視(霊媒)はジェイソンも辛くジョージから抜けてしまった。「もう少しだけ話したい」とマーカスがせがむと、もう一度ジェイソンがジョージに入りマーカスに言う。「もう帽子はかぶるな」と。ジェイソン亡き後、形見である帽子をいつもかぶっていたマーカスに、兄として新たな道を示したのだろう。ところがこのシーン、ジョージから抜けてしまったジェイソンがもう一度入ってくる部分がちょっと不自然というか取ってつけたような感じに見えるんだよね。で、勝手に解釈するとおそらくジョージは芝居をした。深い喪失感で目の前が塞がれてしまっているマーカスを客観的に見ることができたジョージは、その塞いでいる何かを取り去る手伝いをしたのではないかと。兄を愛するあまりに兄に囚われてしまっているマーカスに、亡き兄を愛し、そして自分の人生を生きることは両立できるのだということを。ちなみにこのへんで劇場内からすすり泣きが聞こえました。

ジョージの話。霊視(霊媒)能力のために他人の人生に深く関わりすぎてしまう生活に疲れ、ただひたすらに穏やかに生きたいと願う。心境を変えるために通い始めた料理教室でメラニー(ブライス・ダラス・ハワード)と出会い、お互いに好意を抱いてしまう。ちなみにこの料理教室のシーン、なぜか物凄くエロいことになってます。近頃溢れている即物的なエロではなく、想像をかきたてる官能の世界、という感じ。まったくイーストウッドはムッツリドスケベ爺さんですよ。ありがとうございます。で、物理的に触れることで相手の過去が見えてしまうジョージは、いずれ訪れる悲劇を予想しながらもメラニーと親しくなり、日々の生活に潤ってきたことを実感する。ところがある日ジョージの能力のことを知ってしまったメラニーは自分も見てほしいと乞う。しぶしぶ了承して見えたことを伝えるジョージだが、メラニーが父親に暴行を受けていたことを知ってしまう。メラニーは当初半信半疑だったジョージの能力をこの一件でホンモノだと確信し、ホンモノであるからこそ、この「暴行」がどのようなものか知られてしまった羞恥心と後悔で部屋を飛び出しひとり号泣する。以後料理教室にメラニーが来ることは無く、ジョージはまたも深い喪失感を抱き、こうなることがわかっていながら淡い期待を持ってしまった自分に失望する。ちなみにメラニー役のブライス・ダラス・ハワードは映画監督のロン・ハワードの娘らしい。そしていい感じにエロ可愛い。

そして、あるきっかけでマリーと出会ったジョージは、マリーが深いトラウマ・喪失感を抱いていることを知り、気になるが一歩引いてしまうが、マーカスの勘違い?によって再びマリーと会うことに。そしてカフェで待ち合わせをした二人は抱き合いキスをして感動のラスト。。。なのか?つーかこのラスト、正直よくわからん。。。あと、この3人が絡むまでが長い!もう少しテンポ良くしてほしかったかも。

まとめ。ある事象の「当事者」と「それ以外」の間にはこれほどまでに大きな隔絶があるということ。そして、(事象は違えども)当事者意識を持った者どうしの相互理解・相互扶助による打開・前進(これから:ヒアアフター)の物語。と、感じましたとさ。これって拡大解釈すると、人はみんな何かしらの喪失体験をしているだろうし、当然その当事者なわけで、それは自分だけでなく相手もそうなんだと思えると、全ての人に優しくなれるんじゃないか、そうして世界は平和になるんじゃないか、というところまで行けるんじゃないだろうか。

と、ちょっと宗教っぽくなってきたところで一応書いておくと、僕自身は「人は理解し合えない」と考えているタイプなので、上記はあくまでそう考えちゃったりすることもあったり無かったりという感じ。ただしこの「人は理解し合えない」は諦めではく、現実を理解したうえで努力する、という結構前向きなものだったりする。「人は理解し合える」が前提だと、理解し合えないことが負の感情しか生まない気がしてちょっとツライ。減点方式よりも加点方式のほうがいいなーとか思っちゃったりするケツの青い人間です。

あともうひとつ、僕はよく知らないんだけど、ディケンズ好きにはたまらないネタが色々とあるらしいので、そういうポイントでも楽しめるらしいです。

愚痴
上映中止。公式サイト消滅。自粛するならテレビで何度も繰り返す映像だろう。つーか、基本的にはオープンにして親がフィルタになればいい。そして子供は親の目をかいくぐって覗く。今の社会は親の上のレイヤーでフィルタリングしているので、そもそも見ることができない。まあネットはあるんだけどさ。親が親の役割を果たせない、果たすことを求められない社会の構造がゆとりだとかモンスターなんちゃらを生み出したことになぜ気づかないのか。この映画がキツイ人は予告編でそれを判断できるよ。しかも予告編見ればわかるけど、テレビで繰り返されるあの映像を見たら映画の津波に全くリアリティが無いことがよくわかる。完全に別物。どす黒い濁流が全てを飲み込む映像を見たら予告編は「映画」だと思えるよ。でも映画としては良くできてる。たまたま日本にあんなことがあってホンモノの津波を見ちゃったから綺麗過ぎる感じがしちゃうけど。能動的な鑑賞(見に行く意思が無いと見れない)の対象を自粛して、受動的なテレビ(テレビをつけてるだけで勝手に流れてくる)は何でもアリ。なんだかなあ。という僕の意見も「当事者」ではない者のそれであるという自覚はしている。一筋縄では行かない世の中は面白くもあり難しくもあり。



  
自作サイト
OTOBOKENEKO.NET

2011年5月27日

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